鳩山首相の所信表明演説が行われた。言い悪いの賛否両論があるが、全体にはこれまでの首相に比べればよりその思いは十分伝わってくるものだった。しかし、その評価は、具体的に実行し実現されるか、鳩山政権の今後の行動や結果如何である。
▼所信表明演説全文
日本の抱える問題のすべてをこの演説で具体的に述べることは難しい。「各役所の(政策要求の)羅列みたいな昔ながらの所信表明はやりたくなかった。具体的なところに欠けるといわれたらその通り。今回は私の政治人生、首相として何をやりたいかを知らせる目的で行った」。演説後に記者団にこう語った首相の思いを聞けば、演説の内容は理解できる。
日本経団連の御手洗冨士夫会長は「日本の将来の発展を見据えて政治を大きく変えていこうという意気込みが十分に伝わってくるメッセージ性の高い所信表明だ。力強かった」と評価した。
http://mainichi.jp/select...
首相が演説で「人間のための経済」をうたい、経済合理性や成長率に偏った評価軸で経済をとらえない考えを強調したことに対しては、「経済界も目指すところは豊かな国民生活。豊かというのは物心両面という意味なので(所信表明と)一致する」と述べた。
しかし、直近の八ッ場ダム、JAL、米軍基地問題を含む日本の抱える問題は山積である。日本郵政社長人事、首相自身の故人献金問題、総額95兆円超に膨れた概算要求などなど、アキレス腱も多い。首相の所信を貫く、初志貫徹するリーダーシップを取れるかかどうかである。
余りにもひどい政官業の癒着による税金の無駄使いをなくし、新に必要な事業に予算を振り分け、これ以上赤字国債を発行しないようにすべきである。赤字国債を発行するにしても、納得のいく使い道をすべきであり、情報を国民に開示すべきである。
マスコミは所信表明演説に対して否定的なものが多い。しかし、どのような演説内容であっても、言葉だけでなく実際にその理想が実現されなくてはいけない。明治維新以来の官僚依存体制は時間のかかることかもしれない。焦ることはよくない。新政権は国民に可能な限り、改革をしているプロセスを国民に見えるようにすべきであろう。
しかし思うことは、結局のところ政府は国民の鏡である。政治家が官僚任せであったように、国民が政治家任せであれば同じ構造である。権利を主張するだけでなく、一人一人が日本の未来をどうするかという展望、国民としての責任を果たす自覚を持つことも必要だ。国民の意志、願いを超えて政府は進めないからだ。
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「所信表明演説 理念先行は否めない」(東京新聞)
・・・「新しい政治」にかける意気込みは伝わってきた。しかし、理念先行の感は否めず、政策実現に向けた具体的道筋は依然、見えていない。・・・発足から四十日余りの鳩山内閣に成果を問うのは性急だが、政策実現への道筋が見えなければ、国民に失望感が広がる。・・・代表質問では、理念をどう具体化していくのか・・・ぜひ聞かせてほしい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article...
「鳩山首相、初の所信表明 政治主導へ転換宣言」(中日新聞)
・・・従来の演説からは様変わりした。情緒に流れている印象もあるが、・・・一万三千文字近くを費やした意気込みは伝わる。ただ、「友愛政治」はつかみどころのないままだ。言葉ではなく政策の実現で「友愛」を表現し、国民に生活の中で実感させることができるかどうか。問われる
のは、その実行力にほかならない。
http://www.chunichi.co.jp/article...9
「鳩山首相の所信表明…"友愛政治"実現の道筋を」(毎日新聞)
・・・なかなか力がこもっていた。・・・政権交代の意義を明治維新と比べ、「無血の平成維新」「官僚依存から国民への大政奉還」「戦後行政の大掃除」などのキーワードを並べた。特に、持論である「友愛政治」については、「弱者の居場所と出番のある社会」「官だけではなく地域が担う新しい公共」をうたいあげた。・・・若干言葉が踊っている感はあるにせよ、その気概や良し、である。ただ、要は、政治の実現力だ。その観点からいくつか注文をつけたい。
http://mainichi.jp/select...
「所信表明―理念は現実に刻んでこそ」(朝日新聞)
自分の言葉で、分かりやすく・・・そんな思いが伝わってきた。具体的な政策のあれこれを説明するよりも、自らの政権が目指す社会の姿を、政治の理念を国民に語りかけたいということだったのだろう。・・・具体性がなく、ふわふわと耳に心地よい言葉が並ぶ選挙演説のようだと感じた人もいたかもしれない。だが、さまざまな格差や痛み、制度のほころびが深刻になる日本社会にあって、正面から「社会の作り直し」を呼びかけた率直さが、新鮮に響いたのは確かだ。
http://www.asahi.com/paper...
「所信表明演説 "理念"だけでは物足りない」(読売新聞)
・・・エピソードを交えた、平易な言葉による演説に、政権交代を実感した人もいたに違いない。しかし、理念は、法案や政策として具現化されねばならない。今国会で、鳩山内閣は、その用意がどこまであるのか。首相は、こうした厳しい現実の下、理念を実現するための骨太の国家戦略と、政策の優先順位を、国会審議の中で具体的に明らかにしてほしい。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial...
「意欲見えても中身あいまいな首相演説」(日経新聞)
自分の言葉でわかりやすく語ろうという意欲は感じられた。各省の重点施策をたばねた従来型の所信表明演説のスタイルを排し、演説内容は「脱官僚依存」を印象づけた。ただ50分を超える長い演説を聞いても、政権が目指す国の姿が明確になったとは言い難い。・・・演説全体の基調は、成長戦略を通じて国を豊かにするというメッセージ性が乏しい。首相は成長戦略をはじめとするマクロの経済運営の方針を早急に示す必要がある。
http://www.nikkei.co.jp/news...
「所信表明演説 見えない政策の優先順位」(産経新聞)
・・「いのちを守る」や「社会の絆(きずな)を再生」などのキャッチフレーズを多用した異色の内容だ。・・・役所言葉を排し、国民への分かりやすさを強調したかったのだろう。・・・脱官僚依存にふさわしい内容となるよう、工夫を凝らしたといえる。・・・しかし、内政・外交とも政策を具体的にどう実現していくかが明確に示されておらず、説得力に欠ける。・・・「本当に変革なんてできるのか」という国民の不安は消えない。国会論戦を通じ・・・明確な政策判断を示す責務がある。・・・首相が問われているのはその指導力だ。
http://sankei.jp.msn.com/politics...